畏れ多くも10000Hitを突破致しました。
昨今立ち枯れ状態の当サイトに呆れずおいでくださる皆様に
心からの感謝を込めて・・・・・
千柳亭春宵(以下 柳)「なにを今更お上品にまとめてるかな」
暁乃家万夏(以下 万)「出たな不良大家。今回はうちのHit記念だからねっ!万夏が頂いたりくえすとなんだからねっっっっっ!!」
柳「・・・・昨今すらんぷで昨年10月からまともなアップがない分際で何を言うか」
万「だぁぁ(涙)いうてはならんことをををっっ!!」
柳「厳然たる事実だ、文句言うな」
万「しくしく・・・」
柳「すごく面白そうなリクエスト貰ったってねぇ?しかも期限アリ。今の万夏にそんなん一人で仕上げるパワーがあるのかい?」
万「・・・・・・・ありません」
柳「素直でよろしい。まあ何だね、大家といえば親も同然。親心と思いなさい」
万「・・・いいけどね。その代わり、ここは裏だよ!? 裏なんだからね!?」
柳「ボールド赤文字なんかやらなくてもそれぐらいわかってるってば。少々は大目に見ますよ今回は」
万「ホントだな?」
柳「・・・・(–;; 少々はね(<そこはかとなくイヤな予感)ブッツリいくとこわいからなぁ・・・」
万「ふふ・・・ふふふふふふふふふ・・・・」
柳「・・・・・なんか前言撤回したくなってきたわ・・・」
大家こと千柳亭春宵と合同でお送りいたします♪
リクエストくださったさよこさんに心より御礼申し上げます<(_ _)>
内容的には大家のX’mas企画「聖夜の莫迦話」に準じます。
ストーリーなどというものはきっぱりさっぱりございません。
それでは、どうぞっ♪
Akino-ya Banka’s Room
Evangelion SS 「With all my Heart」
~with all my Heart~
協力・千柳亭春宵
プレゼントの手作りがもてはやされるのは古今東西何処も同じ。ヴァレンタインチョコとて例外ではない。さりとていかにも手を掛けましたというようなチョコを渡すのには抵抗を感じてしまうアスカちゃん。なまじ頭がいいと莫迦ができないから融通利かなくて大変である。
その日デパートのチョコ売り場を放浪したアスカちゃん、結局食品売り場でチョコの材料を買い込んでしまったはいいが、積まれた材料を前に途方にくれてしまう。
なんせ、そんなもの作ったことがない。
レシピはあってもノウハウがない。
せめてあと10日早く決心していれば、と悔やんでも遅い。結局、そういうことに通じていそうな友人に頼るしかないと腹を括って電話を取り上げた。
「あ、ヒカリー?いま暇?もし良かったら遊びに来ない?」
それでも素直に「一緒にチョコ作って」とは言えない辺りがアスカちゃんである。
『ごめーん、今、お客がきてるの』
そういえば、後ろがなにかと騒がしい。・・・というより、どうも台所の喧騒のようだ。
「なに?料理してるの?」
『ううん、チョコよチョコ。綾波さんと一緒なの。作り方教えてっていうから、だったら一緒に作りましょって』
「ファ、ファーストが!?」
アスカちゃん、大ショック。
「そ、そうなの。ごめん、じゃあまた今度ね」
声が裏返りそうになるのを必死に抑えて、電話を切る。しばらくその場に硬直していたが、くるりと振りかえるとキッチンへ猛然とダッシュした。
ファーストにだけは遅れをとりたくないっ!
捻りハチマキ襷がけ、プライドを賭けたチョコレート戦争が始まる。
その夜、惣流家のキッチンから明かりが消えることは遂になかったそうな。
「高々二、三百グラムの炭水化物のカタマリの分際で、どうしてこう予測と異なる結果を呈するのかしら」
「素材の問題はクリアしています。最新式の秤で、ナノグラム単位での計量を実現しました」
「後は温度調節ね。あと、型の強度も問題だわ」
「そこなんです、先輩。形成に型を用いるところに、計画の致命的な欠陥があるのでは」
「そう・・いいところに気づいたわね。そもそも、板チョコを溶かして他の形に作りかえるだけだなんて芸がなさすぎるわ。やはり、例の計画を実行に移しましょう」
「ええっ! つ、ついに・・・・やりましょう先輩、私にもお手伝いさせてください!」
あやしげなビーカーの中で、あやしげなオレンジ色の液体がゆらめく。その中で、茶色い物体がぐもぐもと蠢いていた。
「植物のカルスにチョコをとりこませて、LCL内で培養すれば、理論上はそのまま成長するわ。さらに!EVAを形成する技術を応用してアポトーシス作業を行えば、理想的な形の花を咲かせることも可能!!」
「まさに現代科学の粋をこらした夢のチョコですねっ!」
キッチンで朝日白波を背負って盛りあがるマッドサイエンティスト師弟。それをカウンター越しに覗いたタカミ君、控えめに一言。
「・・・・・リツコさん、あのね・・僕は普通のでいいから・・・・」
「あらそう?じゃ、このチョコどうしようかしら」
「まかせてください先輩。被験者には心当たりがあります」
・・・被験者って。おいおい。
「料理は腹が膨れればいい」というポリシーを持つ葛城ミサトさんは、最初から手作りに固執したりはしなかった。仕事帰りの店で適当なのを見繕い、アルピーヌ・ルノーの助手席にポン。
「そういえば、酒切らしてたわね」
ディスカウント酒店へ車を乗りつけ、エ@スビールを箱買い。ついでに洋酒を物色するうち、おトクなお値段で素敵な瓶に入ったブランデーを見つけた。
「あ、やっぱりこっちのがいいわ」
つい先刻の買い物の事をすっかり忘れて買ってしまい、車に戻って頭を叩く。
「まずったー・・・・ま、日向君にでもあげればいいわ。いつも世話になってるし」
とても義理仕様とは思えない高価なチョコが巻き起こす波瀾を、ミサトさんが気にかけよう筈もない。かくして、誤解は深まるのであった。
「おはよう、シンジ君」
朝っぱらから下駄箱にチョコの山、などという少女漫画的展開を期待していたわけではなかったが、朝一番にかけられた声に一瞬どきまぎしてしまったのもまた事実。
「あ、お、おはよう、カヲル君」
「いやあ、日本にも聖ヴァレンタインの日の習慣ってあったんだねえ。こっちではチョコを贈るのが主流だって?はい、これあげる」
にっこり笑って包みを渡されたはいいが、オーストラリア製の干し果肉いりチョコのように硬くなってしまったシンジ君。どもりながらもようやく礼を言って包みを鞄に押し込む。
「あああああああありが・・・ありが・・・とととと」
「そんなに喜んでもらえると嬉しいなぁ。じゃ、またね」
シンジ君の狼狽を針の先ほども気にかける様子もなく、カヲル君は立ち去ってしまう。
知らないということは恐ろしいという、顕著な一例である。
※欧米では男女関係なく、友人知人にカードを贈るのが一般的だそうな。一説には誰が贈ったのかわからないようにするところもあるとか。
「愛」の守護聖人・ヴァレンティヌスの祭日と言われるが、この聖ヴァレンティヌスという御仁も複数存在しており、一体何の日なのかは実際のところ謎とのこと。時期的には日本の暦で言う立春を過ぎた辺りではあるし、本来春祭り的な意味合いを持っていた可能性もある。 ただまぁ、この「愛」にしても男女間に限らず、本来もっと普遍的なものらしい。日本のヴァレンタインが菓子会社の陰謀であることは既に隠れもない事実である。 余談だが、最近のオーストラリア土産として売りだし中の干し果肉入りチョコレートという奴は、確かに珍しくていいのだが、シャレではなくて歯が立たない。硬いのである。ご自身の歯の強度に自信のある向きは、オーストリアに行った時は購入されてみるのも一興かもしれない。 |
出勤早々、日向君は我が目を疑った。直接の上司に呼びとめられ、いかにも無造作に手渡されたものが信じられなかったのだ。
「ほ、本当に僕なんかが貰っちゃっていいんですか・・・!?」
声と手が震えるのを止めることはできなかった。思わず視界が滲んでくる。顎で使われ虐げられながらも想い続けて幾年月。ついに報われる時が来たのだろうか。
「いーのよ。貰っちゃって♪ 私の気持ちだから」
「かっ・・・・・感動ですぅ・・・」
だが、幸福の絶頂にいる日向君に、その科白は容赦なく襲いかかった。
「いっつも面倒かけてるからねー。これからもよろしくねん♪」
ぐしゃ。
その後救護室に運び込まれた日向二尉は、枕を濡らしている姿を目撃されているのを最後に失踪したとのことである。
今少し言動には慎重になってくれい(--;;
ミサトさんが発令所に入ると、オペレーター3人組のうちの二人までが姿がない。日向君は先刻なにゆえか昏倒してしまって救護室だが、あともうひとりはどうしたことか。
「マヤぁ、どうしたのよ。随分ここ、寂しいじゃない。日向君は今日、休みだけどさ」
「ええ、今日は青葉さんも休みだそうです」
「へえ、どうしたのかしら。あれ、今朝私、本部の中でいっぺん青葉君とすれ違ったような気がするけど」
「さあ・・・」
ミサトさんは気がつかなかった。マヤちゃんが、そんなやり取りをしている間にMAGIを使って仕事とまったく関係ないデータの解析を行っていた事を。
にやり。
マヤちゃん恐るべし。ゆめ、カワイイ外見に惑わされて迂闊なものを口にいれてはいけない。
碇司令は、もともと自分が部下に好かれてるなんて思っちゃいなかった。
ヴァレンタインなんか知るもんかとか思っていた。
それでも、本部内でちらほらと見かけるチョコの影が気に食わない。そんなもんで碇司令、いつにもまして司令室から出ようとしなかった。
いつものポーズで椅子におさまっていると、不意にドアが開く。誰あろう、冬月副司令であった。
「遅いな」
「いや、思わぬことで手間をくってな」
そう言ってアタッシュケースを机に置くと、ポケットの中のものを机に出し始める。
色とりどりの包装紙、リボンと造花。一つや二つではない。両側のポケットと内ポケット、ズボンのポケットにまで入っている。一つ一つは小ぶりだが、その数は結構多い。紛うことなきヴァレンタインチョコであった。
あれよあれよという間に、机の上に一山できてしまう。
「・・・・人気者だな、冬月」
「この日一日で、チョコの年間消費量の2割が動くというからな。こんな爺さんのところにも余慶はあるというわけだ」
冬月副司令、ちょっと照れるの図。
「ところで碇、私は最近歯が悪くてな。とても食べられそうにないんだが、食べるか?」
「・・・・・・要らん」
碇司令、心で泣いた。ヴァレンタインなんかくそくらえ。
「はいサキ、これ」
妹から渡されたものを、高階マサキ君はまじまじと見た。
「あ、くれるの?俺にも」
「皆に平等に作ったのよ。含むところがあっても分け隔てはしないわ」
「含むところって、おい(^^;;」
少し引っかかるところはあったが、ともかくも色とりどりの銀紙に包まれた星型のチョコをひとつ口に放りこむ。
「※∞∂♭ζ!!?」
一発火を噴いてその場に昏倒してしまう。
「・・・・♭∞ゞξ※‡!!」
「なに、言いたい事があったら日本語でおっしゃい」
「ひ、ひっひゃいはひほひほんはんはっ!?」(訳:い、一体何を仕込んだんだっ!?)
「クロガラシの乾燥粉末」
それってマスタードって言わないか、ミサヲちゃん・・・
「タカミがあんたからハルシオン入りのウイスキーボンボンが送られてきたって泣いてたわよ。一服盛って何をする気だったのかしらこの不良兄貴はっっ」
ヘッドロックをかまされて手足をばたばたさせるマサキ君。
「火遊びの危険はヤケドしてみないと分からないって言うけど、これで少しは実感できたでしょ。まったく莫迦兄貴を躾るのも大変だわ」
所詮マサキ君に勝ち目はなかった。とりあえず、合掌。
「はい、すずはら!」
「お、ワイにくれるんかい。おーきにありがとさん」
にこにこしているヒカリちゃんの前で、やっぱりにこにこしながら包みを開ける鈴原トウジ君14歳。
「食うてええんか?」
「うん、食べて!」
大きなハート型の板チョコをわずか3口。いや勿体無い。それよりも恐るべきはそれをわずかな咀嚼で粉々に噛み砕く健康優良児鈴原の歯というべきか。
「ん、うまかったで。もうないんか?」
普通ならこれで平手が飛んでくる。だが、流石はヒカリちゃんであった。
「うん、そういうと思って、これも作ってきたの」
そう言って取り出したのはチョコレートカップケーキ。
「食うてええんか?」
「うん、食べて!」
もしゃもしゃもしゃ。流石に大きさが大きさなので先刻よりも時間はかかったが、きれいさっぱり食べ尽くしてしまった。
「ん、うまかったで。もうないんか?」
「うん、そういうと思って、これも作ってきたの」
そう言って取り出したのは直径15センチのチョコレートケーキ。・・・以下同文。
・・・・もはやコメント不可。
朝一番の衝撃から立ち直ったシンジ君、なんとか2時限目からは出席し、チョコを巡る周囲の平和なやり取りを微笑ましく見ていた。
で、放課後。
「ちょっと顔貸して」
不良がカツアゲ(<どーでもいいが、そろそろ死語だ)してるのとちがうのである。そういう科白と共に両手を腰に仁王立ちで立ち塞がったのは、アスカちゃんであった。
「ほらっ、莫迦シンジ」
差し出された小ぶりな包みと、アスカちゃんのちょっと赤い顔を交互に眺めてしまうシンジ君。
「は、早くしまいなさいよ。は、恥ずかしいでしょ」
「あ、ああ、うん」
あわてて受け取り、鞄の中に仕舞い込む。そのとき、シンジ君は見逃してなかった。アスカちゃんの指先が絆創膏だらけなのを。
「あ、ありがと。アスカ。手づくりなんだ?」
「どうせアンタ、他にくれるひといないんでしょ。ギリよ義理。ギリなんだからねっ!!」
それだけ言うと、ぱっと身を翻して走っていく。それをなんとなく見送ってから、鞄を開ける。
苦心の跡が見える包装を丁寧に解き、現れた奇妙な形態のチョコレートを一口齧った。
「・・・・」
ちょっと苦い。どうやら、焦がしたものらしい。
それでも、シンジ君は笑っていた。ちょっと幸せだったから。
退勤時刻になっても、碇司令は机を動こうとしなかった。
9時を回り、12時を回って、ようやく腰をあげた。要するに、退勤時刻ごろに廊下で氾濫するであろうチョコの受け渡し風景なんか見たくなかったのである。
机の上のものを片付けて、立ち上がる。そのとき、コトンと軽い音がした。
「?」
机の上のものが、何かの拍子に落ちたらしい。机の陰にまわりこんで、碇司令はその物体を拾い上げた。
「なんだ、忘れ物か」
ヴァレンタインチョコであった。冬月副司令の忘れ物であろう、と思ったとき、挟んであるカードに目がいった。
思わず目を疑う。次に、髭面が緩んだ。ヴァレンタイン万歳。
カードを抜き取り、差出人の名を暗がりで見る。Akagi、と読めた。
「なんだ、赤木君か。いつの間に・・・・」
だが、立ち上がって明るい照明の下でまじまじとそのカードを見たとき、碇司令はものの見事に石化した。
夜半、机に向かって宿題を片付けながら・・・・カヲル君は憂鬱だった。
後から日本のヴァレンタインについて正確な知識を得た所為もある。明日学校へ行ったらシンジ君に何らかのフォローをしておく必要があるかもしれない。だが、何より名入り名無し合わせて紙袋から溢れんばかりのチョコを貰ったけれど、一番ほしいチョコが来なかったのだ。
無理ないか。ひょっとして僕みたいに知らなかったのかもしれないし。
でも、例年のようにカードくらいくれたっていいのに。
そう言えば、洞木さんとこへなにやら菓子材料を持って遊びにいってたのになあ。
いろいろ考えていると、宿題は一向に片付かない。
ノートと参考書を広げたままの机にうつぶせて、ぼんやりとスタンドのセードが落とす影を見ていた。
ノックの音がして、カヲル君は飛び起きた。
「カヲル・・・まだ、起きてる?」
「あ、うん。起きてるよ」
入ってきたレイちゃんは、後手にドアを閉めてそーっと入ってきた。
「まだ、12時前・・だよね、一応」
「うん、そうだね」
時計に目をやる。あと5分ほどだけれど。
「遅くなっちゃってごめん。はい、これあげる」
渡されたのは20センチ四方の綺麗にラッピングされた箱。レイちゃんはちょっと視線を俯けて、白い頬がわずかにピンク色。
「・・・中身は昨日のうちにできてたんだけど、包装がうまくできなくて、やっても気に入らなくて、手間くっちゃったの。・・・中身もっ・・・あの、あんまり見てくれがよくないんだけど・・・笑わないでよね」
「そんなことしないよ」
「それからねっ・・・遅くなったから、おまけ」
プレゼントで両手が塞がっているカヲル君の頬に、軽くKiss。
「じゃ、おやすみっ!」
ちょっと吃驚しているカヲル君。勢いよく踵を返そうとするレイちゃんを慌ててつかまえた。
「ま、待ってよレイ。ありがとうも言わせてくれないのかい?」
「え、あ、あはは。正面きってそんなの言われたら、笑いが出ちゃう」
「・・・・頼むから、途中で笑わないでくれよ?」
プレゼントをそっと机に置いて、立ちあがったカヲル君。
「・・・・レイ、知ってた?日本では、聖ヴァレンタインの贈り物は3倍返しが常識なんだって」
そう言って、レイちゃんのほっそりした顎に手をかけた。