誓約の海

誓約の海


 大神官リュドヴィックの子・アンリーが海神へ「奉献」されたのは、シェノレスがツァーリとの戦の準備を整えるための布石。ツァーリに抗するための力を蓄えるための「南海航路」を拓き、シェノレス・リーン・シルメナの三国同盟を成立させるためだった。
 シェノレスがツァーリの軛から脱することが出来れば、南海航路のその先…未知の大陸への道が拓ける。そう信じて、アンリーは自らを供犠とした。


「篝火は消えない」シェノレスサイドの主人公の一人、アンリーの昔話。本編シェノレスサイド+番外編「海風の頌歌」の裏話。
基本はヴァン×アンリー。ないし、アンリー総受け。

供犠~sacrifice~

 ――――聖風王のすえ、現シルメナ国王ルアセック・アリエルⅤ世。
 今その身は、少し蒼みを帯びた月光だけを纏っている。玉座に在るときの…風のように涼やかな美貌と肢体は、纏うものがない時は驚くほど精悍さが際立った。
「私はいたって小心な臆病者だがな。…御身は何を以てそう思う?」
 笑いをおさめて再び書簡に目を落としながら、ルアセックはそう問うた。ねやにいてさえ寸暇を惜しんで政務と向き合うこの国王の行動は、アンリーにとってはまだ読み切れない部分が多い。


供犠 ~sacrifice~
ヴァン×アンリー、アンリー視点。銀狐がアンリーにちょっかい出してます。

涙痕
「供犠」のヴァン視点。

玉響
お題:玉響で2話。前半はヴァン×アンリー、後半は銀狐×サーティス。

贖罪
エルセーニュ決起の裏側。成長したアンリーにすべてを譲ったヴァンには、ひとつだけやりのこしたことがあった。

熱情
「海風の頌歌」裏話。ミラン篇。

火輪
「海風の頌歌」裏話。シエルことユリス篇。

朝凪
「…何も望まないんだな」 月が光条となって差し込む薄闇。起きあがり、淡々と身繕いを始めたミランに、ジュストは身を横たえたままそう言った。「誓約の海」第7話。

氷壁
宿房の静寂を揺らす…余裕のない息遣いを聴きながら、ミランは天窓から差し込む玲瓏たる光条をぼんやりと眺めていた。「誓約の海」第8話。

日蝕
「陽はまた戻る。戦は終わる。皆よく戦ってくれた。…皆でシェノレスに帰る日はもうすぐだ!」 一瞬の沈黙の後、うねりを伴った波のような歓声が城内から沸き起こった。「誓約の海」第9話。

登場人物

アンリーシェノレス大神官リュドヴィックの子。
大神官家特有の「血の緋色」の髪と紅瞳を持つ。
大神官家に伝わる古い記録から、シェノレスよりも更に南に人の住める大陸があることを知り、いつかそこへ辿り着くという夢のために父の命に従う。
ヴァン大神官直属の細作組織「ネレイア」の統領ゼフィール。大神官リュドヴィックと共謀のうえ「奉献」されたアンリーを海から救い上げ、「ネレイア」の次代統領として育てる。本名ジュスト=ブランシュ。メジェドを始め、別の名で対ツァーリのための工作を行っていた。
ジュスト=ブランシュ神官府衛視寮神官。アニエスの再従兄弟。
アニエス大神官リュドヴィックの妹。ツァーリの王に嫁し、王太子アリエルを生むが夭折。
ルアセック・アリエルⅤ世オアシスの連合国家シルメナの王。
その容姿と抜け目のなさから「銀狐」と呼ばれ周辺国家から警戒される。
レアン・サーティスツァーリ王弟、颯竜公。ただし現在ツァーリを放逐され一介の医者として流浪の身。ルアセックの叔母アスレイア・セシリアの遺児。
リュドヴィックシェノレス大神官。アンリーの父、アニエスの兄。
クロエ典薬寮神官。アニエスの親友。
イサーク=フェイギンツァーリ総督。
シュエットヴァンの前の統領ゼフィール。神官府本殿書庫の書司ふみのつかさトリスタンと同一人物。
ミランネレイア統領付の伝令使。シュエットの養い子。
シエル天文寮神官の籍をもつネレイア。本名ユリス=オリヴィエ。