風が止んでも

「…名前。言えるか?」その時、生きた温かみを持った手が額に当てられていることを認識した。手の先に、病衣に覆われた肩がある。大人のひとじゃないな、ということに、安心感さえ憶えた。随分長いこと喋っていない。声が出るかどうか不安ではあったが、少し息を吸い込んでから、口を開く。「…タカミ」第三話、タカミside