高階マサキは、動けなくなった猫を木から下ろそうとして転落、というタカミの受傷経過を聞いて開口一番、
「…莫迦」
といったきり絶句してしまった。
「はぁ、僕もそう思います…」
わずかに朱を刷いた顔で俯き加減に言われてしまっては、叱言もしにくい。だが、木から落ちて目を回しているところを発見して病院へ収容してくれた件の猫の飼い主…それが赤木リツコ女史であったことを聞くと、さすがに顔が引き攣った。
――――研究室に誘われた、という話を聞いては尚更。
Akino-ya Banka’s Room
Evangelion SS 「No Apology Ⅷ」
REAL TIME
『だから、僕はあのひとの前に出るわけにはいかない。そんなことできない。あのひとの研究は完成された。その事実は必要なんだ』
あの夜、そう言い切ったタカミの顔がかすかに青ざめていたのは…煌々たる月の所為だけではなかった筈だ。
あの時点では、タカミは本当にあのまま赤木リツコの前から姿を消すつもりでいたのだろう。タカミが絶望と狂気のなかでやっと拾い上げた希望…それが彼女であったとしても。
生きていてくれれば、それでいいと。
マサキとしても、心中快々として納得できる結末とは言いかねた。だが…いずれ、タカミはネフィリムで、赤木博士はリリンだ。いずれ、時間に分かたれるものなら、今思い切ってしまえる方が倖せなのかも知れない。マサキはそう思っていた。
しかし、出会ってしまったから。しかも、そのきっかけを作ってしまったのは他ならぬマサキだった。
長い眠りから覚め、タカミは再び現実時間を歩き始めることを選択した。それは彼女のためだった筈だ。苦しみの中で最悪の選択をし、落命する未来から、彼女を護りたいという強い意志が、絶望と狂気の闇の中からその魂を引きずり上げることを可能にした。
だが、それが叶ったのだから、もうそれ以上を望まないという。
――――そんな悲愴な顔で笑うな、莫迦。
タカミを大学に行かせたのはマサキだった。家で逼塞していても仕方ない、とりあえず生活の手段を身につけろと言ったのは紛うことなき建前で、虚脱していくタカミを見かねたというのが正直なところだった。
まさか、あの大学に彼女が招聘されているとは。
運命論は思考停止の温床だというのが、マサキの持論だった。それでもこの偶然に、運命という言葉を想起せずにいられない。タカミは運命が差し出す手を取ってしまった。なら、そのことの責任は、自分で取るだろう。
――――もう、アベルではないなら。
――◇*◇*◇――
暮色を濃くしていくその部屋にあるのはデスクと本棚とベッド。ありていに言えば勉強部屋なのだから、他の物は一切ない。やっておかなければならない課題がないでもなかったのだが、手に着きそうになかった。
頭も打った所為か暫く意識を失ったので、暫く大学病院に留め置かれてしまったが…肋骨骨折は、本来血胸1を起こすほどの重篤なものでなければバンドで固定して様子観察、というのが通り相場だ。
しかしそれをマサキに報告すると、即座に今夜は高階邸に泊まれと言われてしまい…タカミは仕方なくこの部屋へ足を向けた次第であった。ようやく安定してきたばかりのカヲルのことが気にかかっていたが、カヲル達のマンションにはユキノに泊まって貰うからと押し切られた。
…ついでに、『カヲルの奴は、お前よりはしっかりしてるから心配するな』とある意味酷いコメントもさらりと付け加えられたのだった。
傷つくなぁ、もう。
そうは言っても、然程深刻に落ち込んだ訳ではない。体動によって一瞬呼吸が停まる程の痛みさえ、鎮痛剤も不要にさせる温かさで胸奥は満たされていたから。
薄暗いままの部屋に入ると、ベッドに腰掛けてそっと胸に手を当てる。あまり大きな呼吸をすると痛みが疾るから、少し控えめに息を吐いた。
――――また、逢えた。
『あなたが手伝ってくれれば心強いわ』
もう逢えないと思っていた。逢ってはいけないと思っていた。…しかしこの偶然を逸することは、できなかった…。
『僕でよければ、喜んで』
また、夢を見ようとしている。罪悪感に胸を咬まれながら、それでも。
多くは望まない。しばらくの間でいい。あのひとの傍で、ひととき同じ方を向いて歩いて行けるなら…ただそれだけでいい。
自分の胸奥に灯ったものの正体を、タカミは未だそれほど明確に捉えきれている訳ではない。…だが、だからこそ今は大切に見定めたかった。
ふと、ノックの音に我に返る。返事をしながら慌てて立ち上がろうとして、胸郭を縛る痛みに思わず動作を止められて呻いた。それが聞こえたのか、やや性急に扉が開かれる。
「…イサナ?」
薄闇の中に炯々たる紫瞳を認め、胸郭を押さえたままタカミは顔を上げた。押さえてどうなるものでもないのだが、体動で惹起された疼痛は動かなければ程なく退いていく。
「怪我をした、と聞いた」
扉を開けた動作の性急さとは無縁の、いつも通り恬淡と…低く落ち着いた声。思わず苦笑する。
「はは…サキってば、みんなに触れて回らなくたっていいのに。お恥ずかしい限りですよ。慣れないことはするもんじゃありませんね、木登りなんて」
ゆっくりと息を吐きながら、身体を起こす。立ち上がろうとするのを、イサナが動作で止めた。
「大したことないんですよ。肋骨を何本か傷めただけです。内臓まではいってません。そこの処は医者二人が太鼓判押してくれましたから。ただ、暫く目を回してたもんだから、サキが今日はここに泊まって行けって…イサナ?」
立ち上がろうとしたタカミを押し止めた手…その強靱だが繊細な指先が、滑るような動作でシャツのボタンを外してゆく。
「あ、のっ…イサ…」
さすがに狼狽えて上体が退き気味になったが、腕を捉えられたことで逃げられなくなる。
まるでボタンの方で勝手に外れていくかのような流麗な動作。タカミがただ呆然としている間に、胸郭を固定するバンドまでさっさと取り払われてしまう。
動きさえしなければ、固定を外されても俄に痛みが引き起こされることはない。だが、脇腹から胸にかけて、内出血のために青黒く変色した箇所を指先が滑ると…疼痛の所為でなく、タカミが呼吸を詰めた。
「…酷いな」
「酷いのはどっちですか。…勘弁してくださいよ、イサナ…っ…」
ベッドに掛けたまま動けないタカミの前に片膝をついて、イサナが痣に唇を寄せる。身体が震え、声を上げそうになって、思わずイサナの肩を掴んだ。そうすることで、辛うじて頽れることから逃れる。固定は外されているから、今身体を動かせば…間違いなく激痛が疾るだろう。
「…お願いですから…っ…」
意識して呼吸を抑制している所為で、その声は囁きのような、掠れた哀訴になってしまう。
だがその哀訴は、一顧だにされなかった。舌先は丁寧に痣の外縁をたどり、胸の紅点を絡め取る。いつもと同じ、優しい触れ方。それでも、身体は竦んでしまう。
「…イサナ…っ…」
多分、怖いのは痛みではない。
触れられることが嫌なわけでもない。自身の躰の裡に現れる反応が、それを証明していた。
ただ、こんな気持ちのまま…身体を預けたくなかった。
与えられる感覚に耐えかね、ついに強く背を撓らせてしまう。当然というか、胸郭を鷲掴みにするような痛みに堪らず呼吸を停めた。痛みと酸素不足に加えて、混乱が激しい眩暈を引き起こして…タカミに身体を起こしていることさえ難しくさせていた。
混乱…そう、混乱していたのだ。
多少の強引さはあっても、イサナは決して理不尽を強いたことはない。どんな微かな反応でも拾い上げて、今までタカミが真剣に拒絶するような行為に及んだことはなかった。
それが却って…実はタカミがイサナを拒み損ねてきた一因ではあったのだが。
だから今、明らかに聞こえているはずの訴えを聞き流し、鋭敏な部分を仮借なく煽り立ててくるのが本当にイサナなのか…タカミには判らなくなる。
イサナの肩を掴んで上体を支えていた腕に、ついに力が入らなくなる寸前。不意に刺激が止んだ。がくがくと震える腕をようやくのことで突っ張ったまま、荒く呼吸をついていると…ふっと身体が浮き上がった。何処に触れられたか判らないほどに自然に、身体がベッドの上に横たえられる。
横になるにしても身を起こすにしても、自分でやっても痛みが疾る程だったのに…その時は魔法のように何も感じなかった。
暫く、呆然としていたと思う。呼吸が落ち着き、聴覚を圧してがなり立てる鼓動が少しおさまって、ぼやけていた視界が何とか焦点を結んだとき…ようやく、すぐ傍の紫瞳に気がついた。
「…すまない、大丈夫か」
声はいつも通り恬淡としていたが、その指先は少し気遣わしげに髪
を撫でている。先程までの様子が悪い夢か幻であったかのように。
「…はい…」
ようやくそれだけ言って、続けるべき言葉を探す。薄闇の中の紫瞳が、どこか寂しげにさえ見える光を湛えていたのを見て、肋骨とは別の痛みを感じたからだ。だが結局、何を言って良いのかわからずに、ただイサナの頬に手を伸べる。
タカミは小さく吐息した。
「イサナ、僕は…」
ようやくそう言いかけたとき、言葉は落とされた口づけで塞がれた。
ゆっくりと、深く…。
離れるまでにかけた時間を思えばいっそ素っ気ないほどに、イサナは立ち上がった。そして、衣服をほどかれたままのタカミの身体にふわりと上掛けをかけてドアに足を向ける。
遠ざかる足音を聞きながら、タカミは腕で両眼を覆い…細く息を吐いた。
――◇*◇*◇――
どうかしている。
階下へ降りながら、イサナは苦いものを噛みつぶす。
衝動に身を任せるなど、イサナにとってはもっとも忌むべきことの筈だった。自己は律するべきもの。鍛錬によって得た力も、ネフィリムとしての生を享け獲得した感覚も、衝動のままに行使すればただの凶器だからだ。
あんなつもりはなかった。本当にただ見舞うだけのつもりだったのに。
『医者二人が太鼓判押してくれましたから』
誰と、誰か。訊くまでもないことだった。どっちが引っかかってしまったのかは判らない。
痛々しいばかりの内出血痕を抱え、それでも倖せそうな微笑を見てしまったら、イサナの中で何かがふつりと切れた。
――――紛うことなき嫉妬。あまりにも幼稚な。
嫌なら拒めばいい。そんな理屈が、言い訳でしかなかったことを残酷なほどに思い知る。言葉で、行動で、はっきりと拒んでくれればまだよかったのかもしれない。
あえかに紅を滲ませた眦。潤んだ緑瞳が浮かべたあまりにもかすかな拒絶に、これほど胸を抉られるなど…思ってもみなかった。
――◇*◇*◇――
迷った末、マサキはその扉をノックした。
細く応えがあったので押し開けたが、部屋の中は真っ暗だった。スイッチを探り掛けた手は、同じくか細い声に押し止められる。
「…ごめんなさい、サキ…点けないでもらえます?」
部屋の主がベッドに身を横たえたまま身動ぎしたのが、かすかな音と気配でわかった。声の掠れ方で胸郭の固定を外してしまっているのを察して、マサキは嘆息する。
薄闇に目が慣れると、白い肩が上掛けから覗いているのが浮かび上がるように見えた。半ば俯せているから、また少し伸びてきた栗色の髪に遮られて表情は見えない。
カーテンから漏れ入る光はひどく淡い。今夜は月が繊いか…。
マサキはデスクから椅子を引っ張ってくると、ベッドの脇に据えた。ひくり、と上掛けから覗いた肩が震えたのがわかったが、黙殺して椅子に掛けた。
「…痛むか」
「いいえ、動きさえしなければ、特には」
暫く、沈黙が降りた。
「固定を外したな。それじゃ動けんだろ。起きろ、固定をやり直す」
「…はい」
身を起こす。その動きは非常に緩慢であったが、惹起された痛みにタカミが細く呻いた。ベッドの下に滑り落とされたままの胸郭固定用バンドとシャツを拾い上げながら、マサキが再び嘆息する。
シャツのほうは無造作に枕元に投げ、起き上がったタカミの傍に膝をつく。薄闇の中でも、近づけば白い膚に散らされた紅い痕が看て取れた。
「安静が守れなければ痛みは遷延するぞ。…意味は解るな?」
そう言いながらマサキがバンドを巻き直す。
「…はい…」
バンドの圧迫感に少しだけ呻いたあと…それまで平坦だったタカミの返答の語尾が、不意にかすかな笑いで揺れた。
「何だ」
「…いえ…。怪我でもないと、僕には触れてさえくれませんよね。あなたは」
そう言って、マサキの背に腕を回してくる。それは、ただ戯れつくようでもあり…確かな熱を含んだ所作のようでもあった。
「ジオフロントでだって…僕はあなたの出血を止めようと思って一生懸命だったのに、あなたってばもの凄く邪険で。悲しかったなぁ」
くすくすと笑う。そして、回した両腕で引き寄せたマサキの肩に頬を擦り寄せ、唇を耳朶に近づけて囁いた。
「…それほどに、『アベル』がしたことは…あなたを傷つけたんですね」
甘え、戯れつくような所作でありながら、ひどく心細げな声音。マサキが一瞬だけ呼吸を停めた。
それを、悟られたのかどうか。
「タカミ、あのな…」
マサキは応じることも、振り払うこともせず…ただ、言わなければならないことを言葉にしようとして、まとまらずにただ黙した。タカミはまた小さく笑って、腕を回したときと同じようにするりと離れた。
「…冗談です。ごめんなさい」
そして、細く息を吐きながら…起きたときと同じように緩慢に身を横たえる。固定がきっちりしている所為か、顔を顰めることはなかった。
マサキもまた椅子に身を戻し、憮然として何度目かの嘆息を漏らす。居心地の悪い沈黙が降りた後、口火を切ったのはマサキだった。
「…『サッシャ』はもう居ない。だから、サッシャがどう思ったかなんて俺は知らんよ。ただ、あの時傷ついたのはサッシャじゃない…アベルだ。お前がまだアベルで、まだ償えるというなら…俺が出来ることは何なりとするさ。
だが、お前がタカミなら…お前が気に掛けることじゃない。俺もお前に無用な干渉はしない。大人の姿である以上、年齢相応の扱いが必要だからな」
その瞬間、身を横たえたままのタカミが息を呑んだのが判って…マサキは少し突き放すような物言いになってしまったことを後悔する。
「…そうですね…」
細く…詰めた呼吸を逃がしながら、タカミが言った。
「…僕は、『タカミ』ですよ。そう呼ばれて、僕は目覚めた。だから、あの暗闇から出て来られたんだ」
少し眉を顰めながら、タカミが寝返りを打つ。そして、マサキを見上げて柔らかく微笑んだ。微笑んでみせたようにも見えたが。
「でもね、イサナのことも好きなんです。…それだけですよ。だから、何も…」
ふと、声が途切れる。そうして口にした言葉は、言いかけたものとは明らかに別物だった。
「…イサナは、優しいですよ」
そして、造作に似合わぬ艶めいた微笑を浮かべてみせる。もはや何も言えず、マサキは立ち上がった。
「とりあえずもう休め。…痛い思いをしたくないなら、暫くは大人しくしてろ」
そのまま立ち去ろうとして…マサキはなんとなく足を踏み出し損ねた。まるで捨て台詞のようだ、と言ってしまった直後に悔いた所為もある。
だがそれよりも…マサキを見上げる一見穏やかな緑瞳が、いつかと同じ…切羽詰まったような色彩を押し込めているように見えたからでもあった.。
少し口調を和らげる。…タカミのかすかに汗ばんだ額に手背で軽く触れ、発熱していないことを確かめるとすぐに離れた。2
「…圧迫感で寝苦しいなら固定は緩めても構わんが、起きる時にはきちんと締めたほうがいい。大学病院から鎮痛剤は処方されてたが、頓服だから痛みが自制内なら夜はなるべく飲むな。お前の場合、あれは一過性に効き過ぎて転倒しかねん。これ以上怪我を増やしたくはないだろう。熱はいまのところなさそうだが…同じ理由で、もし上がっても解熱剤3は使わず冷却で様子見する。いいな?」
「…はい。ご厄介かけてすみません」
いつもの、至極素直な返事。幾分つくっている感はあったが、マサキはそのまま部屋を出た。
――◇*◇*◇――
外見が変わってしまっても、時に残酷とさえ思える優しさは変わらない。
タカミが輾転反側して結局眠り損ねているのは、何も寝返りするごとに苦情を申し立てる肋骨の所為ではなかった。
『お前がタカミなら…お前が気に掛けることじゃない。俺もお前に無用な干渉はしない。大人の姿である以上、年齢相応の扱いが必要だからな』
意外でも何でもない。マサキならそう考えるだろう。予想はついたし、そんな感触はあった。それでも…言われてしまうと相応に堪える。
届かない想いに疲れて、『アベル』は消えてしまった。『仮面』のコントロールに失敗して正気を保てなくなったのも本当だが、結局のところ狂いかけた精神を引き留めるほどの執着を、この世界に見いだせなかったからだ。
だからもう、アベルはいない。その記憶が…悲しみも、絶望も…幾ら鮮明に残っていたとしても。
悲しみの記憶が胸を刺すことはあっても、絶望に捕まることはもうないから。
マサキは完全に正しい。でもたった一つ、見落としていることがある――――
――◇*◇*◇――
タカミは物理障壁としてのATフィールドの行使についてはいたく不器用だが、他者の思考を読み、また自分の裡を他者に読ませないことについては他の追随を許さない。タカミが本気で遮蔽にかかったら、マサキでは直接触れたところで読ませはしないだろう。…だから、熱を診るために触れたときも無駄なことはしなかった。
廊下へ出て数歩…マサキはふと足を止め、廊下の壁に寄りかかる。顔の下半分を手で覆って、また零れそうになる嘆息を抑し止めた。
医者としての言葉なら、ああもすらすらと出てきてしまうのに。
マサキが何を言っても…結局、タカミは口を噤んでしまう。
もう、苦しんでいないのならいい。だが、そうは思えない節があるから、放っておくのも気がかりではあった。
イサナのこともそうだ。
イサナは本気でタカミのことを案じている。それについて、マサキは疑ってなどいなかった。しかし、常に完璧に自己を律しているイサナが、タカミのことに関してはどうにも抑制が外れているように思えてならない。今日のことなどその最たるものだった。
しかし、そこに自分に口出しする筋合いがあるのか。かつて、静かに壊れていくアベルをどうしてやることもできなくて、全てイサナ…ユーリに任せた。それなのに今更、自分が何をしてやれる?
タカミはともかく、イサナは自分のことは自分で決められる。今更大きなお世話と言われても仕方ないだろう。
――――過去は過去、現在は現在。峻別しようとしている自分が、実は一番囚われている気がして…頭を振った。
――――――――Fin――――――――
Akino-ya Banka’s Room
Evangelion SS 「No Apology Ⅷ」
「REAL TIME」についてのApology…
拗らせて楽しんでる…と思われそうだ
「裏なら裏らしく裏書きましょう」シリーズ続編♪ 今回は「すべて世はこともなし」のExtra Part直後の裏話ですね。リツコさんと再会が叶ってちょっと舞い上がってるタカミ君がイサナにご無体される話。…おっと未遂か(←うわ、酷え)
前話はイサナのタカミ君に対する執着が、実はサキに自分を認識して欲しいという欲求の裏返しだという怖い話だったわけですが…本人全く自覚がないのでタカミ君大迷惑。ただ、彼自身にしたところでアベルだった頃にサッシャに惚れてて、『仮面』の転写に託け一服盛った上に押し倒した(設定上、当時15歳前後…まあ、カヲル君ぐらい?…をいをい)という凄まじい経緯さえあるのでなんとなくイサナを無碍に出来ない。そもそもキライじゃないし。それで結局ずるずると続いてたようです。
しかし今回は、タイミングがタイミングだけに頭が切り替わらなくて本当に泣きが入りかけたもんだから、イサナもさすがに自制かかったようですね。これが前半。
しかしタカミ君としても後味悪かったもんだから、様子を見に来たサキにちょっとだけ八つ当たり的な嫌がらせをしてみたというのが話の後半。タカミ君、アベルだった頃は結構性格がよろしかったようで。今回そっちが前面に出ちゃってます。怖いこわい。
サキにとってはイサナは優秀な右腕で、何でも出来ると思ってるから何をやらかそうがサキは全く口を出さない。実はそれでイサナが焦れてるなんて…サキは全く想像もできてないのが不幸なところですね。
前にも書きましたが小説における色恋沙汰なんて、拗れてナンボです。そーは言っても、別にそれが楽しい訳ではなくて…さてさて、どーやって収拾つけよう…(汗)
「REAL TIME」は例によって池田聡さんのシングル「僕は君じゃない」のC/W曲からイタダキました。これも切ない感じの素敵な曲です。別れてしまったけど、忘れ難いひとがいて、また傷つけ合うことになるのかも知れないけど、それでもやっぱり逢いたい…的な。拗れるの確定な状況であるトコだけは重なってますかね。
それでは皆様、次回まで万夏が正気でいたら・・・・・いや、何も申しますまい・・・・・・(^^;
2019/4/30
暁乃家万夏 拝